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<<   作成日時 : 2011/03/27 20:07   >>

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「原子炉建屋の角の模様、
 何かの動物の顔に見えませんか?」
見学バスツアーのガイドの女性は
私たちにそう問いかけました。
建屋に描かれた雲の模様が折り返す角の部分、
ロールシャッハ的に左右対称なその場所が
何かの絵柄に見えるという話で、
たしかコアラだったかパンダだったか。
4年前、ヤング☆パイン市を出て
相双地区に赴任してきた時に、
一度だけ福島第一に見学に出かけたときのことです。
トリカラは原発敷地内に入ることに
とても抵抗を感じていたのですが、
うききちは「後学のために」と言っていました。

それからおよそ4年。
来年度からの転勤を言い渡され
引っ越し日程も新居も順調に決まって
仕事の引き継ぎに、荷づくりにと
慌ただしい日々が到来しました。
3月11日の午後、
うききちは引っ越し手続きのために早退、
トリカラは部屋の段ボール整理をしていました。

その時です。
いまだ体験したこともない、
いつ絶えるとも知れない大きな揺れが
襲ってきました。

棚を支えるうききちの手の隙間から、
あらゆる物がこぼれおちていきました。
何もかもが床に落ちて
足の踏み場があっという間になくなりました。
まな板立てに差してあった刃物類が
キッチンの床に飛び散りました。
揺られ続けたランプシェードが裏返しになりました。
冷蔵庫の上にあったオーブンレンジが
頭上めがけて飛んできそうだったので
あわてて反対側に押しこんだら、
差し込みプラグが二つに割れて
レンジはそのまま向こう側へ落下していきました。

引き出しにしまってあったアクセサリー類が
揺られて開閉する扉に裁断されて
鋭利で危険な金属片と化して
床にばらまかれました。
ガラス類と食器類は割れ、
液状のものは皆こぼれました。
部屋のどこかで揮発性の匂いがしました。
ポンプの差してあった灯油タンクは倒れて玄関に流出し、
トイレのタンクも揺れてあふれていました。
押入れにしまってあった送風機が勝手に飛び出して
隣室の扉をふさぎ、退路を断っていました。
冷蔵庫の中身はシャッフルされ崩れていました。

TVをつけたら、
今までに聞いたこともないような高さの
津波警報が出されていたけれど、
到達予定時刻が早すぎて
運を天に任せるしかありませんでした。
「しっかりしろ、自分!」と頬をたたいたり、
自分がこれから何をしようとしているのかを
ひとつひとつ口に出して確認したりしなければ
茫然自失して座りこんでしまいそうでした。
波打つ心臓、震える手を抑えて
とにかく退路を確保するために
床を埋め尽くす品々を
手当たり次第に棚に詰めることしかできませんでした。

まだ大きい余震が絶え間なく続く中、
うききちは職場に引き返し、
トリカラは部屋の中を
ざっくり片づけて放心していました。
ふと膝に鋭い痛みが走り、見ると
だくだくと血があふれだしました。
おそらくガラスの破片でしょう。
刺さっているものが見えないから、
その辺の組織をやみくもに引きちぎってから、
ガラス片を完全に取りきるまで
粘着ローラーを何往復となく床に転がし続けていました。

外は雪が吹雪いていたけれど
ガスや火は怖いので使わず、
いつでも出られるようコートは着たままで
ずっとNHKにかじりついて、

TVで地震速報が流れる頃には
もう次の揺れが来ている状態で
一晩じゅう揺られ続けて、

次から次へと鳴り続ける
緊急地震速報の不協和音を浴びていたら
そのうちだんだん疲れてきて、
もう震度4以上の揺れや
直下型の初期微動じゃないと
立ち上がれないようになって、

あまりに揺さぶり続けられた家屋も
だんだんと嫌な軋み音を立て始め、

そしてTVの中で上がる巨大な火の手…
暗闇の中で何かが起こっているのを
薄々感づかされつつ、
夜が明けて被害状況が明らかになるのが怖かったのです。

そう…

朝になったら…



朝になったら、



海岸線が

見知った光景が

そこに息づく人々が
ごっそりと波にえぐり取られていました。

やがて断水が始まり、
鳴りやまない警報音、
大津波警報の災害アナウンス。

そして
その日の午後、
南の方角にある福島第一原子力発電所から
白煙が上がったのです。


画像


3月12日以降、
トリカラはうききちの実家に疎開しました。
うききちは原発30km圏内の南相馬に残り
津波で浸水した地区の水を除去し
行方不明者や遺体捜索の協力作業をしています。
南相馬は、被災から2週間経った今も
輸送の手段が途絶えている地域です。

転勤も引っ越しも、
震災とともに流れました。
トリカラは被災後
ショック障害が出たため
メンタルケアを受けつつ
うききちの受けた累計放射線量を計算して
祈るように帰りを待つ日々です。

線量計の支給も防護服もなく
交代要員の補給もなく
ずっと屋外作業を強いられている
うききちが心配です。
一命は取り留めたけど、
生き残るだけじゃダメなんだ。
生き残るだけじゃダメなんだよ。 
どうか無事であってほしいです。

被災され、生き延びた人々が
早く、一日も早く
平穏な日々を取り戻せますように。    (トリカラ)



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